
吉田博の渓流の感想が素晴らしいです!
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渓流の三作品をご購入いただいたKS様よりご感想をいただきました。
先のブログで紹介させていただきました”馬込の月”に続き心のこもった素晴らしい言葉をありがとうございます!
KS様より・・・
吉田博の渓流の3点を入手し鑑賞しています。
吉田博は全く知らなかった画家・版画家で、ハイカラ美術館で知りました。館長さんも再発見者の一人の様で、自ら現在の印刷技法で版画を再現されています。ネットでも多くの方が知らなかった画家だと投稿しています。特に版画によるアルプスの山々や渓谷を流れる渓流の作品には感嘆されています。
私も部屋の壁にかけて鑑賞していますと山岳から流れ出た清流が渓谷となり時には滝となり流れる様子が音と共に聞こえてくるようです。
登山家でないとアルプスやその雪解け水を流す渓谷には容易に近づけませんが、絵の中に入って山岳自然美を感じさせるのは画家本人が自然美に感動して表現しているためであろうと思われます。
江戸時代の北斎や広重とはまた別次元の版画完成者と評価してよいのではないでし
ょうか。
ハイカラ美術館で入手した川瀬巴水の作品は彼の生きた時代の風景と風物を版画で活写していますので、現在鑑賞するとノスタルジックに感じるところがあります。巴水の作品は芭蕉の俳句と紀行文を鑑賞することと重なってきます。
一方吉田博は時代の風景や風物に左右されないアルプスと渓谷美を版画で残しました。いずれの作者も理屈に左右されない無意識にある自然美への共感が表現されているので感動と感銘を与えるのであろうと考えられます。
渓流
この渓流は何処で描かれたか調べたがわかりません。どなたかお教えください。
尾瀬ヶ原の至仏山を源流として群馬県沼田市を流れる有名な「吹割の滝」の一部の様な
気もするが、同じ場所で描かれた油絵もあり違う場所のようです。
ハイカラ美術館ではすでに渓流のプリントを出されていましたが、今回のプリントの色合いは芽吹き始めた若葉を映した渓流の季節感を感じさせます。
渓流は利根川上流と言われています。説明不足で御免なさい。ハイカラ美術館
黒部と中房川

黒部川
明治から大正の初めにかけてイギリス人ウオルター・ウエストンが日本アルプスを
登山し海外に紹介したことがきっかけで日本でも近代登山が始まりました。
立山連峰を沿って流れる黒部川は当時人が踏み入ることが困難な秘境であった。
館長さんにお教えいただいた吉田博の画文集「高山の美を語る」には「黒部川こそは
文字通り幽谷であって、聳り立つ絶壁の底に流れているのは、澄明たとえるものもな
い水である。その水底には一々指摘することのできる、鮮やかな色彩を帯びた石が沈
んでいる。これこそ高山谿谷美の極致である。」と表現している。
画家で登山家であった吉田博によって描かれた作品に私は感謝したいと思います。
中房川
北アルプスのふもと安曇野を流れる中房川の渓谷を映した画です。
いくつもの岩にぶつかる急流がよく表現されています。現在は沢登りやイワナやヤマメ釣りで賑わう渓流のようです。
日本には秘境にある渓谷や身近で気軽に行ける渓流があることで誇るべき自然美を満喫できます。
今回入手した吉田博の渓谷美のプリント3点は現地に行かなくても味わえる素晴らしい作品と思います。
私の感想・・
絵を鑑賞することの心の豊かさは、未知の世界へ足を踏み入れる喜びであり、新しい発見と、もっと知りたいという思いであり、自分自身を持ち上げて生きる力です。
私はKS様の感想を読ませていただいてそう感じました。
私は吉田博の絵から感じる自然の大きさや清浄さ偉大さを、どうあらわして良いのかと常々考えてきました。
絵は自身の内側の目で観ることで、画家の創造の意図や感情が伝わり共感が生まれます。
KSさんの絵画への思いから私はそう感じました。
版画の歴史の視点とともに説明されていて、わかりやすく丁寧で本当に素晴らしいです。どうもありがとうございました。
ーKyoko